授業実践
このページでは、中学校の国語の授業で取り組んできた実践を、先生方に向けて紹介しています。説明文、小説、韻文と文章の種類は違っても、どの単元にも共通しているのは、「書いてある言葉を根拠に読み、自分の言葉で表現する」ことです。
すべての授業に共通する考え方
言葉を根拠に読む
授業では、文章を正確に読み取る練習を「トレーニング」と呼んでいます。「本文のどの言葉が根拠かな?」と問い続け、感覚ではなく、書かれている言葉にもとづいて読む習慣をつけていきます。
交流は「言い直す」ためにある
意見を出し合って終わりにせず、他の人の読みを受けて、自分の読みを言い直す時間として交流を位置づけています。毎時間の終わりには、考えが変わった跡を一文で残します。変わらなかった場合は、なぜ変わらなかったかを書きます。
全員が参加できる「最低ライン」
「根拠となる言葉を一つだけ示せればよい」というように、どの生徒も交流に参加できる最低ラインを、全体の活動の中に組み込んでいます。読む力の差を前提にしながら、「読める/読めない」で序列をつくらないための工夫です。
授業中、手元に置いておくカード
授業のその場で迷いやすい場面について、教師のふるまいを決めています。
| 場面 | 避けたい対応 | 選ぶ対応 |
|---|---|---|
| 生徒が静かに悩んでいる | すぐにヒントを出す | 何も言わずに少し待つ。言葉を探している時間です |
| 面白い読みが出た | 教師がほめて終わる | 「どの言葉からそう読めた?」とクラスに返す |
| 全体共有が発表会になりそう | 教師がまとめて終わる | 「同じ言葉から違う読みをした人は?」と問いかける |
| まとめの時間 | 「よく頑張りました」で終える | 「今日、どの言葉で読みが変わった?」と振り返らせる |
実践1 説明文「フロン規制の物語」(第3学年・全8時間)
単元の概要
本文を読み取り、要約し、ほかの事例と比べ、発表し、書き直す。「読解→要約→比較→発表→リライト」の流れで、論理的に説明する力を育てる単元です。夏休みの個人リサーチをはさむ構成にしています。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 7月(第1〜2時) | 本文の読解と要約 |
| 7月(第3〜4時) | 課題の設定と、情報を集める準備 |
| 夏休み | 個人でのリサーチ |
| 8月(第5〜6時) | 集めた情報をまとめ、読みを修正する |
| 8月(第7〜8時) | 発表と、互いの文章のリライト |
設計で工夫したこと
- 三段階の要約:30字で話題、60字で成功の要因と課題、100字で筆者の主張まで入れる、と段階を分けて要約します。字数を増やすごとに、何を足すべきかがはっきりします。
- 反対の立場から読む:「規制に反対する人は、どんな理由を持ち得たか」「筆者は反対意見を十分に扱っているか」などの問いで本文を読み直します。筆者を疑うことは否定ではなく、より正確に読むための方法だと伝えています。
- 最後まで本文に戻る:調べ学習に流れすぎないよう、どの活動でも本文のページと行に立ち返る仕掛けを入れています。
- 休み明けの最低ライン:リサーチが終わっていない生徒も、「主張を1つ、根拠と出典を1つ、フロン規制との共通点か相違点を1つ」をそろえれば、休み明けの交流に加われるようにしました。
実践2 小説 魯迅「故郷」(第3学年・全7時間)
単元の概要
二十年ぶりに故郷へ帰った「私」が、幼なじみの閏土との間にできた隔たりに直面し、次の世代への希望を考えるまでを読む単元です。単元を通して、一つの問いを考え続けます。
「私」と閏土の間にできた「厚い壁」は、なぜ生まれ、越えることはできるのだろうか
単元の流れ
| 時 | 考える問い |
|---|---|
| 1 | 帰郷した「私」は、故郷をどのように感じているのか |
| 2 | 少年時代の閏土は、「私」にとってどのような存在だったのか |
| 3 | 楊二嫂の変化から、どのようなことが読み取れるのか |
| 4 | 親しかった二人の間に、なぜ「厚い壁」ができたのか |
| 5 | 故郷を離れる「私」は、何を願い、何を疑っているのか |
| 6 | 作品の表現と構成は、隔たりをどう描いているのか |
| 7 | 「厚い壁」は越えられるのか(単元を貫く問いに答える) |
設計で工夫したこと
- 毎時間の3つのミッション:一つめは選択肢から答えを選び、すぐに「本文のどこから?」と根拠を説明させます。三つめは、複数の場面を関連付けて考える問いにしています。
- 表現の効果を評価する:冒頭の鉛色の空と、回想や結末に描かれる紺碧の空・金色の月との対比、「厚い壁」や「道」の比喩が、隔たりと希望をどう描いているかを考えます。
- 自分の意見で締めくくる:最終時間は、単元を貫く問いに200〜300字で答えます。あわせて、今の自分たちの周りにある「厚い壁」と希望について、自分の意見を書きます。
- 作者と語り手を分けて読む:作者の魯迅と、作中の語り手「私」を区別して読むことを、最初の時間に確認します。
実践3 韻文 俳句と和歌
単元の概要
俳句の単元(全7時間)では、「鑑賞文を書く」と「俳句をつくる」の二つを柱にしました。和歌の単元(全5時間)では、『万葉集』『古今和歌集』『新古今和歌集』を読み比べ、「なぜ和歌は三十一文字だけで、豊かな情景や感情を表現できるのか」を考えます。
どちらも、評価の軸を作品のうまさではなく、問いを受けて自分の表現や読みをどう磨き直したかに置いています。
俳句の単元:生徒の振り返りから見えたこと
単元の終わりに、生徒の振り返りを集めて分析しました。
- 定着したこと:季語を使うことや、五・七・五の形は、創作でほぼ全員ができていました。
- 伸びしろ:最も多かった声は「読めるけれど書けない」でした。情景は思い浮かぶものの、それを鑑賞文の言葉にできないという悩みです。切れ字や助詞の効果まで意識できた生徒も、多くありませんでした。
- 見えてきた課題:「先生に言われて気づいた」という声が目立ちました。生徒どうしの問いで読みを深めるという狙いが、教師に頼る形に寄りがちだったことがわかりました。
和歌の単元に生かしたこと
俳句の振り返りを受けて、和歌の単元では次の点を設計に組み込みました。
- 途中の答えを残す:第4時に「今の時点での答え」と「根拠の言葉」を書き、最終時でそれをどう更新したかを書きます。考えが変わる過程そのものを、学びの成果として残します。
- 質問例カード:「どの言葉からそう考えたの?」「つまりどういうこと?」などの質問例を全員に配り、教師に頼らず生徒どうしで問い合える状態をつくります。
- 優劣を決めない比較:「どの歌集が一番か」ではなく、「伝わり方の質がどう違うか」を言葉にすることを狙いにしています。
先生方へ
紹介した実践は、どれも試行錯誤の途中にあるものです。うまくいかなかったことも含めて共有し、同じように国語の授業づくりに取り組む先生方と、学び合えればと考えています。
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